◆カルト映画『ファントム・オブ・パラダイス』の劇中に登場する架空のレコード・レーベル Death Records(デス・レコード)のロゴTシャツ。USインポート品
怪奇映画の古典『オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)』、『ファウスト(Faust)』などの物語を70年代のロック音楽界に置き換えてロック・ミュージカル仕立てにした鬼才ブライアン・デ・パルマ監督によるカルト映画『ファントム・オブ・パラダイス(Phantom of the Paradise)』。この映画の劇中に登場する架空のレコード・レーベル「Death Records(デス・レコード)」のロゴTシャツを入荷。カナリアの仰向けの死骸の下にレーベルロゴがあしらわれた不穏ではあるがグッドデザイン!
『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年) は、一人の作曲家の悲劇をロックとパラノイア的な映像で描いたカルト・ムービーで、その鮮烈な映像美とロックを融合させた作風はMTVの元祖と言われている。『ロッキー・ホラー・ショー(The Rocky Horror Picture Show)』(1975年) と双璧をなす70年代のロック・ミュージカル映画で、1975年にアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞した。ロックのみならず70年代のポップ・カルチャーやファッションも見所となっている。
デス・レコード社の悪徳プロデューサー/社長のスワン役にポール・ウィリアムス(ウィリアムズ)、無名の天才ロック作曲家ウィンスロー(後に仮面を被った“ファントム”と化す)役にウィリアム・フィンレイ、ウィンスローが恋した駆け出しの女性歌手フェニックス役にジェシカ・ハーパー、マッチョなオカマ・シンガーのビーフ役にゲリット・グレアムが抜擢された。ポール・ウィリアムス自身も音楽家で、本作で音楽を担当しアカデミー賞にノミネートされた。また『アリー/ スター誕生』(1976年)他、数多くの映画音楽を担当。さらにカーペンターズやスリー・ドッグ・ナイトなどへも楽曲を提供している。近年では、Daft Punk(ダフト・パンク)が2012年にリリースしたアルバム『ランダム・アクセス・メモリーズ』で共同作詞・ボーカルを務めた。このアルバムはグラミー賞の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。尚、ダフト・パンクのヘルメットのアイデアは『ファントム・オブ・パラダイス』から生まれたと言われている。また、スワン役のウィリアムスはアニメ映画 『ルパン三世 ルパンVS複製人間 (クローン)』(1978年) の科学者マモーのモデルにもなった。ウィリアム・フィンレイは本作での怪演が評価され、その後もデ・パルマ監督の作品に出演し、ジェシカ・ハーパーは本作を観たダリオ・アルジェントの目に留まり、傑作ホラー映画『サスペリア』に出演。その後、ウディ・アレンの映画にも出演した。名バイプレイヤーのゲリット・グレアムの怪演もインパクト大。カルト・ムービーの傑作となった本作、未見の方は是非観て欲しい。
この映画には多くのトリビアが存在するがさらにもう一つ。劇中のファントムの作曲シーンはロサンゼルスのレコーディング・スタジオ、レコード・プラントのスタジオBで撮影された。ファントムの後ろに半円形状に配置された機材は“TONTO(The Original New Timbral Orchestra)” と呼ばれる当時の世界最先端かつ世界最大のシンセサイザーであり、その正体はMoog(モーグ/ムーグ)やARP(アープ)などのシンセやカスタム・モジュールを組み合わせた巨大なモジュラー・シンセであった。またTONTOのサウンドに熱狂した最初のミュージシャンの一人はスティーヴィー・ワンダーで、大ヒット曲「Superstition(迷信)」の象徴的なベースラインはTONTOによって作成された。尚、前述のレコード・プラント・スタジオは1968年にニューヨークで設立され、ロサンゼルス、サウサリートにもスタジオを構え、いわばロックの聖地であったが、ほぼ全ての音楽ジャンルにおいてレコーディングを行い、数々の歴史的名盤を生んだ。レコード・プラントで最初にレコーディングされたアルバムは、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの『エレクトリック・レディランド』(1968年) であった。ニューヨークのスタジオは1987年に、サウサリートは2008年、ロサンゼルスのスタジオも2024年に閉鎖され、レコード・プラントは55年に及ぶ歴史に幕を閉じた。